コノヒノ道具店の読みものでは、 ものづくりの背景や、作り手の「声」に、そっと耳を傾けていきたいと考えています。
今回は、愛知県・知多半島を拠点に布小物を制作されている nonano さんに、ものづくりのはじまりや、日々の制作についてお話を伺いました。
—— まずは、ものづくりを始めたきっかけを教えてください。
nonanoをはじめたきっかけは、結婚を機に移り住んだ愛知県・知多半島での暮らしでした。
東京から離れ、知人もいない土地での生活は、はじめこそ不安もありましたが田畑や山、海に囲まれた風景や、季節ごとの食べもののおいしさに触れるうちに、少しずつこの土地が好きになっていきました。
いつの頃からか、「仕事をするなら、この土地の産業に関わりたい」と思うようになり、次女の産後で慌ただしい日々を過ごしていたあるとき、知多木綿・知多織物の存在に出会いました。
その瞬間、ふっと心が動いたのを今でも覚えています。
子育てに全力で向き合いながらも、これまでの経験を生かしたいという思い、帰宅した子どもたちに「おかえり」と言える働き方をしたいという願い、そして、自分自身も楽しみながらものづくりをしたいという気持ちが、少しずつひとつになっていきました。
隙間時間を見つけては動き出し、ひとつずつ形にしていくうちに、気がつけばnonanoとしてのものづくりが始まっていました。
—— 作品の「好きなところ」や「こだわりポイント」はどこですか?
布小物の好きなところは、使い続けるうちに少しずつ表情が変わっていくところ。
最初は少し張りのある生地も、暮らしの中で使われるうちに、くたりくたりとやわらかくなり、手に馴染んでいきます。
気がつけば、いつもの場所にあって、自然と手に取っている。
そんなふうに、暮らしに寄り添いながら一緒に時間を重ねていけるところに魅力を感じています。
デザインについては、主役を引き立てる存在であること、 華美になりすぎず、日々の暮らしの中で長く使ってもらえるような、静かな佇まいを心がけています。
また、作品には古くから縁起が良いとされるモチーフを取り入れています。
手に取ってくださった方の暮らしをそっと守りながら、日々が少しでも豊かになりますように。
そんな願いを込めて制作しています。

—— 日々の制作の中で、インスピレーションを受ける瞬間や、影響を受けているものはありますか?
特別な出来事というよりも、日々の暮らしの中にある小さな気づきから生まれることが多いです。
「今使っているものが、もう少し使いやすくなったらいいな。そこに少し面白さや、かわいらしさがあったらもっといい。」
そんなふうに、まずは道具としての使い心地を考え、そこから少しずつ形をふくらませていきます。
暮らしの中で感じたことを重ねながら、ものづくりへとつなげています。
—— 休みの日や、ふと息をつく時間は、どんなふうに過ごされていますか?
土日祝は、子どもたちとの時間に全力です。
その分、平日に少しだけ自分の時間ができたときには、気心の知れた友人と美味しいものを食べながら、ゆっくり話をすることが多いです。
そんな何気ない時間が、自分にとってとても大切で、日々の暮らしやものづくりのバランスを整えてくれているように感じています。
—— 制作の相棒といえるものはありますか?
気持ちを切り替えたいときには、コーヒーやココア、ハーブティーを飲むことが多いです。
AirPodsを手に入れてからは、音楽やラジオ、動画を“ながら聴き”しながら制作する時間も増えました。
また、日々の疲れをほぐすために、目元や身体をあたためるアイテムや火を使わないお灸も欠かせません。
制作を続けていくための、ささやかな支えになっています。
—— 最後に、作品を手に取ってくださる方へメッセージをお願いします。
nonanoの作品は、デザインから縫製、出荷までをすべてひとりで行っています。
けれど、その背景には、ミシン糸や布、資材、精練加工など、たくさんの方々の力添えがあり、どれひとつ欠けても生まれることのないものだと感じています。
そして、コノヒノ道具店のように届けてくださるお店があり、手に取ってくださる方がいるからこそ、nonanoというものづくりが続いています。
そんな背景にも少しだけ思いを重ねながら、日々の暮らしの中で愛でていただけたら嬉しいです。
これからも、ひとつひとつを愛おしみながら制作していきます。

nonanoさん ありがとうございました。
—— インタビューを終えて
知多半島での暮らしの中から生まれたnonanoさんのものづくりには、特別な装飾ではなく、日々の生活に寄り添うやさしさが静かに流れていました。
使い続けるうちに少しずつ表情を変え、気づけば暮らしの一部になっていく布小物。
それは、使う人の時間とともに育っていく道具なのかもしれません。
印象的だったのは、ものづくりを特別なものとして切り離すのではなく、家族との時間や日々の暮らしと同じ地続きのものとして大切にされている姿でした。 その穏やかでまっすぐな在り方が、そのまま作品の佇まいにも表れているように感じます。
何気ない毎日の中で手に取り、いつもの景色に自然となじんでいくこと。
そして、ふとした瞬間に小さな心地よさを感じられること。
作り手の想いや背景を大切に受け取りながら、 これからも、暮らしの中に静かに寄り添うものを、丁寧に届けていきたいと思います。
文:コノヒノ道具店 樫原渚